ビジネスシーンや日常生活で定着しつつある「トレードオフ」。会話のなかで突然出てきても、それが何を意味するのかわからず困った経験はありませんか。その場で意味を聞くことができず、話についていけなかったなんてこともあるかもしれません。
この記事では、トレードオフとは何かについて詳しく解説します。ビジネスシーンや日常生活など、場面ごとに身近な事例も確認しておきましょう。
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トレードオフとは?
言葉の使い方や具体例を知る前に、トレードオフの意味についてしっかりと把握することが大切です。ここでは、類似語として挙げられる言葉との違いも解説します。
・トレードオフをわかりやすく説明すると
トレードオフとは、両立しない関係性を意味します。「何かを得るためには何かを失う」という状態を指す言葉であり、もともとは経済学で使われていました。
たとえば、リスクとリターンはトレードオフの関係です。資産運用においてリスクゼロでリターンを得るのは難しく、2つ以上の欲求を同時に満たせません。近年では、ビジネスシーンや日常生活など、さまざまな場面で活用される言葉の一つです。
・トレードオフの関連用語と違い
トレードオフの類似語として「機会費用」と「二律背反」があります。同じ意味として勘違いされがちな言葉であるため、その違いを確認しておきましょう。
■機会費用
機会費用とは、あるものを得るために捨てた利益を意味します。機会損失とも呼ばれ、その選択肢を選んだ際に得られる価値が犠牲になっています。たとえば「もっと働きたい」のトレードオフで育児を選択した場合、働き続けた場合に得られたはずのキャリアや賃金が機会費用です。トレードオフの選択では、機会費用が何なのかまで確認しましょう。
■二律背反
二律背反とは、互いに矛盾する2つのものが存在することを意味します。哲学者であるカントの「アンチノミー」の訳語として知られる哲学用語です。トレードオフは日本語で「二律背反」と訳されることもありますが、厳密には意味が異なります。
ビジネスシーンにおけるトレードオフの具体例
ここでは、ビジネスシーンにおけるトレードオフの具体例を紹介します。トレードオフの解消が経営課題となることも少なくありません。経営資源と分配先の関係であり、これらを一定のポリシーの下で適切に管理することが大切です。
・品質と価格の関係
トレードオフの一般的な事例で挙げられるのが、品質と価格の関係です。消費者は高品質で長持ちする製品を好む一方で、低価格であることを求めています。これを実現すれば、消費者は得をしますが、製造側が損をするため商売が成り立たなくなるでしょう。
品質と価格面のどちらかを優先させると、どちらかが犠牲になります。消費者が納得し、製造側も事業を成功させるためには、品質と価格のバランスを考慮することが大切です。
・需要と在庫の関係
需要と在庫についても、ビジネスシーンのトレードオフの例として挙げられます。需要がある商品は、欠品を防ぐために多くの在庫を抱える必要があるでしょう。あまり多くの在庫を抱えて売れなければ仕入れ代金は回収できず、赤字を引き起こすリスクがあります。
また、在庫管理するための保管場所や人件費も必要です。多くの在庫を持つことはさまざまなリスクをもたらしますが、在庫を減らすと販売機会を逃すことになります。
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経済におけるトレードオフの具体例
ここでは、経済学におけるトレードオフの具体例を3つ紹介します。
■物価と失業率の関係
一般的に、物価と失業率の関係は以下のようになるとされています。一般的に、物価と失業率の関係は以下のようになるとされています。
・物価が上昇すれば失業率は下がる
・物価が下降すれば失業率は上がる
この2つはトレードオフの関係にあり、経済学者であるフィリップス氏が提唱しました。たとえば、物価の上昇は企業の業績が向上し雇用が増えます。反対に、物価が下降すれば企業の業績は低迷するため、リストラなどで失業者が増加するということです。
■経済成長と環境問題の関係
現代社会において、経済成長と環境問題はトレードオフの関係にあります。たとえば「二酸化炭素の濃度を下げなければ地球温暖化は止まらない」とされています。一方で、経済成長には多くのエネルギーが必要であり、自然と二酸化炭素の排出量も増えるのが現状です。
つまり、経済成長を優先すれば環境破壊につながり、環境を守れば経済成長は見込めない関係ができあがります。経済と環境の両側面からアプローチすることが大切です。
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日常生活におけるトレードオフの身近な事例
ここでは、日常生活におけるトレードオフの身近な事例を紹介します。トレードオフの関係は日常生活のなかにあふれており、無意識のうちに選択している場合がほとんどです。
・散財と貯蓄の関係
トレードオフの身近な事例として挙げられるのが、散財と貯蓄の関係です。基本的にお金は無限にあるわけではなく、限られたなかでやり繰りをしなければなりません。
そこで葛藤が生まれるのが、貯蓄しようという考えと散財したいという欲求です。将来に向けて貯蓄が大切なのは理解しているけど、たくさん買い物をしたい気持ちもあります。欲しいものを好きなだけ買えば欲は満たされますが、貯蓄額は減るということです。
・喫煙と健康の関係
喫煙と健康もトレードオフの関係に当てはまります。健康的な生活を送り長生きをしたいけれど、ストレスの軽減などでタバコを吸いたいという気持ちによる葛藤です。
喫煙習慣は、肺がん・心筋梗塞・脳梗塞など数多くの疾患に関係しています。喫煙者は非喫煙者と比較すると、寿命が8〜10年短縮するという報告もあります。このように、タバコ自体が有害なものであるため、吸えば少なからず健康に害するということです。
参考元:日本医師会「たばこの健康被害|禁煙は愛」
・育児とキャリアの関係
働く女性が増えている一方で、育児とキャリアによるトレードオフの関係があります。育児に時間を費やせば、キャリアを諦めざるを得ない場合もあるでしょう。
もちろん、育児をしながらでもキャリアアップは図れます。しかし、業務内容や勤務時間を調整する必要があり、子育てと仕事の両立が難しいケースは少なくありません。時間拘束があるなかで育児をとるか、キャリアをとるのか個々の判断が求められます。
・勉強と遊びの時間の関係
日常生活では、勉強と遊びの時間もトレードオフの関係にあります。勉強すると遊びの時間は減り、遊びの時間を増やすと勉強が疎かになるかもしれません。
どちらかを増やすと、もう一方の時間は減るため失うものも出てきます。トレードオフを上手く活用するためには、バランスを考えて時間を割り当てることが大切です。どちらか一方に偏らないように、時間を調整しましょう。
・生物の進化の過程での関係
トレードオフの関係は、生物の世界においても使われます。たとえば「飛ぶ」という特徴がある鳥類のなかには、ペンギンのように「飛べない」という鳥も存在します。ただしその代わりとして、水中の魚を獲るための泳ぐ能力を持っているのが強みです。
何かができないけれど、その代替となる強みを持っている生物の特徴でもあります。このように生物の身体的な特徴も、トレードオフの関係があるといえます。
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まとめ
トレードオフの関係は、さまざまな場面で応用できます。Aを選んでBを捨てるという単純なことではなく、捨てた損害をいかに小さくするかが重要です。トレードオフの関係を見直すことにより、限りなく損害を小さくし、得られる利益を大きくできます。トレードオフの関係だからと諦めず、改善策は何かないのかを練っていきましょう。
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識学上席講師 大熊 憲二
2011年入社 ソフトバンク事業部に配属となり、史上最速の9ヵ月でマネージャーに昇進し、店舗拡大に貢献。
2014年モバイル事業部移動となり、業界全体が縮小傾向で低迷する中、200坪以上の超大型店等の新規出店に従事。
2016年に識学と出会い、識学に基づくマネジメントを徹底し、モバイル事業統括として史上初の年間目標完全達成を記録。
株式会社P-UP neo取締役常務執行役員兼識学上席講師として現在に至る。