多くの企業では異動や転勤、退職に伴う人事面に関する辞令を出しているものです。特に社員数の多い企業では、期首になると頻繁に辞令が交付されています。
また、辞令に納得できない人もいることでしょう。そこで、ビジネスマンや人事担当者ならば知っておきたい辞令の種類、トラブルの対処法を解説していきましょう。
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辞令とは
辞令とは、企業の人事面で異動などに関する発表用の書面のことを指しています。辞令自体は法律で定められたものではなく、企業文化として根付いてきたものと考えられます。
辞令の内容は役職に伴う昇格や転勤、出向、配属など多岐に渡り、対象の個人だけでなく、広く社内への通達に使って全従業員へ周知させることが可能です。
主に大企業のグループ会社を中心に使われることがあり、ビジネスマンなら一度は見たことがあるといえるでしょう。
■内示・発令・任命の違い
辞令には内示や発令、任命とあります。
内示は人事の対象となる本人へ事前に連絡することです。発令はその辞令を正式に出すことで、辞令の発令日が記載されています。本人への内示をしないまま発令するのは精神的な動揺も見受けられますし、事前の準備もあるので基本的に内示から発令となるのが一般的です。任命は特定の役職に就くことを指しており、部長や課長に任命するといった文面になります。
■辞令の出るタイミングは企業によって違う
辞令の出るタイミングは企業によって異なります。ただ、転勤など転居を伴う場合、最低でも1か月前に内示は必要でしょう。特に既婚者で子どもの転校が必要な場合は家族の協力や理解も大事です。
また、辞令がよく出るのは4月や7月、10月といった時期になります。4月は新入社員の辞令が多く、10月は前期の内容から体制をガラッと変えることもあれば、落ち着き始めた7月あたりに前期の改善として実施する場合があります。
辞令の種類
辞令には複数の種類がありますので見ていきましょう。
・転勤
・出向
・異動(配置転換)
・新規採用
・昇進・降職
・任命・解任
・退職
■転勤
転勤は勤務先が変わることを指します。支社や支店に転勤となれば、引っ越しも考慮しないといけません。家族持ちは単身赴任か転居するのか家族と相談する必要があります。ただ、勤務先が同一エリアの場合もあり、通勤時間こそ変わっても転居が不要となることもあるでしょう。
また、転勤が多い職種もあります。代表的なのは銀行です。都市銀行になれば2~3年で全国転勤も珍しくありません。
■出向
グループ企業など関連企業へ所属が変わります。出向は在籍と転籍に分かれ、出向前の企業に在籍したままだと前者となり、出向先の企業と新たな雇用契約を結ぶのが後者の転籍出向です。
出向も転居を伴うケースが多々あります。
■異動(配置転換)
人事異動という名称で使われ、所属企業内での部署変更が主な異動となります。企業側のスキルバランスの見直しや組織活性化、人材教育など理由は多岐に渡るでしょう。製造業の現場になると、配置転換によって夜勤など交替勤務の有無につながることがあります。
■新規採用
新規採用者への辞令です。新卒者は概ね4月1日に辞令が発令されます。中途採用者は入社日に辞令が発令されるのが一般的です。
■昇進、降職
出世ともなる昇進は係長から課長、部長など、役職が上がるときに辞令が発令されます。逆に役職が下がるときには降職となります。
■任命、解任
新たなプロジェクト発足など、役目に就任するときに任命が使われます。また、逆の場合には解任が使われますが、降職の代わりを解任で表現する企業もあるでしょう。
■退職
退職は全体に発表することはあまりないですが、企業によっては個人への退職辞令を発令していることもあります。
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辞令を拒否したい!可能か?
辞令というのは社員にとって死活問題になることもあります。行きたくない部署への配置転換や転居を伴う転勤・出向など、辞令を拒否したい人もいるでしょう。
辞令に法的な効力がないので拒否できるのかみていきます。
■基本的に拒否できない
まず、辞令は会社側の希望や願いではなく、業務改善のための指示・命令と受け取れます。入社時の労働契約によって人事異動の発生は言及しているでしょうから、社員側は基本的に断れないのが実情です。
ただし、正当な理由がなく人事異動はできないのも事実ですから、内示のときに異動の理由をしっかりと確認しておきましょう。
また、育児や介護において当該社員が不利益となる場合には、会社側が配慮しなければならないと法律で定められています。
辞令でのトラブルと対処法
人事担当者の場合、辞令でトラブルが起きてしまうと通常業務にも支障をきたしてしまいます。そこで、特に起きやすいトラブルと対処法を説明します。
■転勤・出向の場合
転勤や出向はだれでも嫌なものです。新たに人間関係を一から構築しないといけません。勤務地が変更となることで、通勤時間が大幅に増えてしまう恐れもあります。また転居を伴ってしまう場合、家族の理解が得られないとして辞令を拒否する姿勢を貫く社員もいるでしょう。
出向では期限を決めていればまだしも、何年になるのか不明な場合だと社員の理解を得られずに、有給休暇の消化で引き継ぎ作業をしないような自暴自棄になるケースもあり得ます。
■配属など異動の場合
配置転換などで部署異動の場合、納得がいかない社員もいるものです。まだこの部署でやりたいことがあったという人もいれば、配属先の仕事内容に不安を持つ場合も考えられます。内示でごねる社員も当然いますし、不満から内示を漏洩する恐れがあります。このような社員は処罰の対象にもなりますが、異動に伴う処罰は会社的にイメージが良くありませんし、他の社員のモチベーションも低下する恐れがあるでしょう。
■事前に内示で丁寧な説明をする
トラブル回避のためには、内示の際に丁寧な説明をするのがおすすめです。人事異動が業務命令で、雇用契約書や就業規則に定められていると促しても納得いかない社員もいます。
会社側が一方的に説明するのではなく、社員側の事情をしっかりと聴いておくようにしましょう。社員側の言い分をすべて聞くわけにはいきませんが、会社側に知ってほしい実情などは把握しておき、考慮できる部分は検討するように伝えることでトラブル回避にもつながります。
社員が辞令に応じない場合の対処法
社員が辞令に応じない場合の対処法をみていきます。
■条件の見直しを行う
社員が辞令を拒否する姿勢を貫く場合、条件の見直しも検討しましょう。人事異動は会社側にとって何らかのメリットや効果を期待できるから行うものです。勤務条件の見直しで出向では期間を定めることや次回の転勤・配置転換の有無、そして手当など給与に反映できる要素があれば社員側も納得しやすくなります。
■降格や自主退職への促しも検討
それでも納得いかない場合、降格や降級で会社側の評価や給与が下がる旨を通知し、自主退職へ促すことも視野に入れておきます。最悪の場合は懲戒解雇となりますが、訴訟に発展するケースも否定できません。もちろん、業務命令ですので会社側に非はないものの、メディアに出れば「そのくらい妥協できなかったのか」「社員が訴えるって相当強引な人事かもしれない」とマイナスイメージを世間に持たれてしまいます。
自主退職を促すまでが妥当な選択肢といえるでしょう。
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まとめ
辞令は人事異動に関する発表用の書面であり、基本的に業務命令で社員側が拒否できません。転勤や出向、配置転換といった異動に関するさまざまな種類があります。辞令は内示・発令・任命となり、出すタイミングは7月と10月が多くなっています。
辞令は社員の生活にも影響を及ぼす可能性があり、トラブルに発展する恐れがあるものです。内示のときにしっかりと説明をしておき、社員側の言い分も聴くように心がけておきましょう。場合によっては条件の見直しも検討しておくとトラブルを回避できます。
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識学上席講師 大熊 憲二
2011年入社 ソフトバンク事業部に配属となり、史上最速の9ヵ月でマネージャーに昇進し、店舗拡大に貢献。
2014年モバイル事業部移動となり、業界全体が縮小傾向で低迷する中、200坪以上の超大型店等の新規出店に従事。
2016年に識学と出会い、識学に基づくマネジメントを徹底し、モバイル事業統括として史上初の年間目標完全達成を記録。
株式会社P-UP neo取締役常務執行役員兼識学上席講師として現在に至る。