目次
はじめに
今回の記事では「人事評価制度」について分かりやすく解説させていただきます。
一口に人事評価制度といっても、様々なHR系のコンテンツが世の中に普及していますよね。「評価制度を構築しますよ~」というような人事コンサルも増えています。
経営者の中でも「やっぱり評価制度って重要だよね」という話がよく出てくるんですね。特に近年は、コロナ禍でリモートワークやテレワークが普及し、色々な変革が起きていますから。
私も、毎月のようにセミナーを開催しているのですが、実は、この人事評価制度に関するセミナーが一番人気なんです。最も参加者が多いんですよ。だから、やっぱり多くの人が「人事評価制度」に対する悩みや不安を抱えているんですね。
そのセミナーでは、大きく8つのポイントに絞って解説しています。「最低限この8つは覚えていきましょう」みたいな感じです。
今回は、その中の1つ。「人事評価制度における自己評価」について解説していきたいと思います。
人事評価制度における「自己評価」
皆さんの会社の評価制度の中に、「自己評価」ってありますでしょうか?
私が実際によくお見かけするのは、
・行動指針に則って積極的に行動することができたか
・プロジェクトの目標達成プロセスをどれくらい進められたか
・どれくらいリーダーシップを発揮することができたか
このような項目において、自分の中で5段間評価を行うみたいなケースですね。5点4点3点2点1点と、それぞれ自己採点するみたいなイメージです。
こういうシステムって、皆さんの会社にありますか?自分で自分に点数をつける仕組み、いわゆる「自己評価」ですね。
実はこの仕組み、全然ダメなんです!
「自己評価」はするな!
例えば、私が識学講師ではなくラーメン屋の店長だったとしましょう。
「私は昨日寝ないで究極のラーメンを開発しました」
「世界一美味しいラーメンを昨日作っちゃったんです」
「皆さんもぜひ食べに来てください」
私がいきなりこんなことを言っていたら、どう思いますか?
店長としての自己評価がものすごく高い状態ですよね。私の自己評価はマックスです。100点満点のラーメンを提供します、みたいな。
そして、実際にラーメンを食べに行ったら、結果まずかったと。大熊がやっているラーメン屋全然ダメだと。店長はめちゃくちゃ美味しいって言っているけど、実際はめちゃくちゃまずい。
このように、実際にラーメンを食べた人の評価が低かった場合、私の100点満点の自己評価って、意味ありますかね?
皆さんがご飯を食べに行くとき、仮にそこの飲食店の店長が「これオススメです」と言ったとしても、実際はまずかったら、もうその商品を頼むことはないと思うんですよね。もう1回食べに行くことはないですよね。
要するに、まず自己評価って意味ないんですよ。
自己評価による弊害
上述の通り、自己評価って本来は全く意味のないものなんですね。にもかかわらず、「意味があるもの」だと、会社の中で認めてしまっているのが現状です。
まず、これが「弊害その1」です。
では、「弊害その2」は何でしょうか。多くの場合、「積極性あります」とか「リーダーシップ発揮してます」みたいな項目が設定されていて、そこに部下が自己評価で5点とか4点とか入れてくるじゃないですか。このような評価シートを使っていると、だいたいの場合、部下の自己評価点数が入ってきたものを、上長が見ることになりますよね。
要するに、例えば私が部下の評価をする際に、部下が既に5点とか4点とか付けている状態なんですよ。既に評価の付いているものを、私がさらに評価者として採点していくようなイメージです。
このような状態は、実はあまり健全ではありません。
例えば、先ほどのラーメン屋の店長が、「これめちゃくちゃ美味しいです」と自己評価の高いラーメンをおすすめしてきた場合は、そこまで問題ないんですね。あくまでも他人なので、まずいものはまずいと思っちゃいますし、もう普通にそのお店には行かないですよね。
しかし、自分の部下となると、話は違ってきます。
いつも頑張っている部下が、5点を付けてきたとするじゃないですか。
私もやっぱり部下との人間関係や信頼関係がありますし、「部下の給与を下げたい」とか「部下の評価を下げたい」なんて1ミリも思っていませんから。だからこそ、余計な感情が入ってきてしまうんですね。
部下が5点を付けてきて、私本来の評価は3点だったとします。でも少し可哀想だから、4点付けてあげちゃうんですよ。
どうしても人間関係があるので、このように、部下が付けている点数に引っ張られてしまうわけです。
本当は3点だと思っているのに4点を付けてしまう。本当は4点だと思っているのに5点を付けてしまう。これって何の評価なんですか?って話になりますよね。
情が湧く部下に対しては点数が高くなって、情が湧かない部下に対してはドライな数字を付けてしまう。つまり、上長側の感情とか感覚的なものが評価に影響してしまうわけです。これが「自己評価における弊害その2」です。
無駄な評価面談が生まれてしまう
そして最後に「弊害その3」です。
部下の自己評価点数と、上長の評価点数がズレてしまっている場合、当然、部下側は納得いかないですよね。「俺めちゃくちゃ頑張ったから5点付けたのに、なんで上司は3点なんだよ」みたいな。
自己評価と他社評価にギャップがあると、やっぱり部下側は納得できないんですね。
だからこそ、多くの企業では「評価面談」というものが行われます。要は、自己評価と他社評価のギャップを埋めていくための面談です。
「ギャップを埋めて、足並み揃えて、じゃあ次頑張ろうね」という面談なんですけど、これが「弊害その3」です。一言でいうと、完全に”時間の無駄”です。
部下の自己評価と、それに引っ張られた上司の評価を見比べて、そのギャップを埋めていっても、全く意味ないですよね。形式上、評価面談だけして、お偉いさんとか重役に対して「はいやりました」っていう作業にしか過ぎないんです。
だからこそ、自己評価そのものを廃止すべきだと言えます。「この部下がこういう結果を残しました」という部分だけを、上司がしっかりと評価してあげればOKなんです。その方が、部下もすぐに成長できますし、チームとしての成長スピードも絶対速くなりますから。
実際、この「3つの弊害」をちゃんと理解している経営者や人事部長の方は、会社の人事評価制度の中に「自己評価」を入れていません。
「これから評価制度を構築していこう」とか「来期に向けて評価制度を見直そう」と考えている方は、ぜひ自己評価について改めて熟考してみてください。
本日のまとめ
最後までご覧いただきまして、誠にありがとうございます。今回は「人事評価制度における自己評価」に関して分かりやすく解説させていただきました。
重要なポイントをまとめると、以下の通りです。
ーー
・自己評価は意味がない
・弊害その1:本来意味がないのに「意味があるもの」と誤認してしまっていること
・弊害その2:上長側の感情や感覚的なものが評価に影響してしまうこと
・弊害その3:無駄な評価面談が行われてしまうこと
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当メディアでは、他にも部下育成や組織運営に関する解説記事をアップしておりますので、ぜひ参考にしてみてください。また、疑問点や不明点等がある方、識学に興味がある方は、お気軽に弊社までお問い合わせください。
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