医療法人の経営において、優秀な人材の確保や職員の定着率向上に頭を悩ませていませんか?
医師や看護師の採用難、離職率の上昇や人件費の高騰など、人材に関する課題は年々深刻化しています。
本記事では、医療業界が直面する7つの課題を体系的に整理し、人材マネジメントを中心とした具体的な解決策を解説します。
ぜひ貴院の組織改革にお役立てください。
病院経営は、院内の努力だけでコントロールできない外部環境の変化に大きく左右されます。
とくに現在の医療業界は、社会構造の変化がもたらす深刻な課題に直面している状況です。
これらの課題を正しく認識することが、今後の経営戦略を立てるうえでの第一歩となります。
ここでは、以下5つの観点を解説します。
詳しく見ていきましょう。
2025年問題とは、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になることで生じる問題の総称です。
この時期を境に、国民の医療や介護の需要がさらに増加することが見込まれています。
この需要構造の変化に対応するため、国が推進するのが地域包括ケアシステムです。
これは、高齢者が可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを続けるための支援体制となります。
地域においては医療・介護の関係機関が連携し、多職種協働により在宅医療・介護を一体的に提供できる体制を構築することが推進されています。
医療分野における人手不足は深刻で、厚生労働省の調査によると未充足求人を抱える事業所は75%に上ります。
この数値は他業種と比較してもとくに高く、医療業界の厳しい実情を反映しています。
専門職を中心に人材が確保できない状況は、既存職員の負担増を招き、医療サービスの質低下にもつながりかねません。
欠員率も3.5%と高い水準であり、安定した経営のためには採用戦略の見直しや労働環境の改善が急務といえます。
参考資料:厚生労働省「労働経済動向調査(令和6年8月)の概況」
2024年4月から、医師の長時間労働を是正するための働き方改革が始まりました。
背景には、病院常勤勤務医の約4割が年960時間を超える時間外労働を行うという、深刻な実態があります。
この改革では、医師の時間外労働に対して原則年間960時間の上限が設けられます。
そのため、各医療機関は限られた労働時間で、診療体制を維持しなければなりません。
医療の質を確保しつつ、タスクシフトなど業務効率化への取り組みが急務となっています。
日本の国民医療費は、高齢化の進展などを背景に、年々増加の一途をたどっています。
令和4年度には46.7兆円に達し、令和5年度の概算医療費も同様の増加傾向です。
国民皆保険制度を維持するため、この医療費の伸びを抑制しようとする動きは避けられません。
この状況は、病院のおもな収入源である診療報酬の改定に直接的な影響を与えます。
収入の伸びが費用の伸びに追いつかず、利益率が低下する中で各種費用の上昇に対応する必要があり、難しい舵取りを迫られています。
医療機関の経営層、とくにクリニックの医師の高齢化が深刻な問題となっています。
厚生労働省によると、高齢の医師が承継者なく引退した場合、2040年には診療所がない市区町村が約170増加する可能性が示されました。
後継者不足は、単に1つのクリニックの閉院にとどまらず、将来にわたる地域での医療提供体制を確保するため、その対応が求められる課題です。
このため国は、医師が少ない地域でクリニックを承継・開業する場合の支援を検討しています。
外部環境の変化に対応するには、自院の内部に目を向けなければなりません。
多くの医療機関では、長年の慣習や組織構造に起因する、内部課題を抱えています。
ここでは、以下2つの内部的な課題を掘り下げます。
これらの問題を解決し、持続的な病院経営を実現しましょう。
病院経営において人件費は、費用の大部分を占める項目です。
医療は多くの専門スタッフで成り立つ労働集約型の事業であるため、人件費が経営を圧迫しやすい構造となっています。
厚生労働省の調査によれば、医療法人が運営する一般病院の人件費比率は上昇傾向にあり、令和2年度には58.8%に達したというデータもあります。
しかし、人件費を単純に削減すると、職員の士気や医療の質が低下する可能性も。
そのため、業務効率化による生産性の向上が求められます。
参考資料:厚生労働省「令和3年度 医療施設経営安定化推進事業 病院経営管理指標及び医療施設における未収金の実態に関する調査研究」
日本の医療現場では、情報化を推進することで、これまで紙で行っていた院内業務や医療機関間の情報連携が効率的に行えることが期待されています。
厚生労働省の調査によれば、令和5年時点での電子カルテの普及率は一般病院で65.6%、一般診療所では55.0%にとどまっています。
400床以上の大規模病院では93.7%に達する一方、200床未満の病院では59.0%と、施設規模によるデジタル格差が大きな課題です。
高額な初期投資やIT人材の不足などが導入の障壁となり、DXの遅れは人手不足をさらに深刻化させます。
医療業界の課題を放置すれば、経営リスクは高まります。医療の質の低下や職員の疲弊、財務の悪化、最悪の場合は廃業に至る可能性も。
ここでは、以下4つのリスクを解説します。
詳しく見ていきましょう。
人手不足と業務過多により、個々の患者に向き合う時間が減少しています。
診察時間の短縮、待ち時間の増加、きめ細かなケアの不足など、患者満足度の低下は避けられません。
深刻なのは、医療安全への影響です。
疲労した医療従事者によるヒヤリハット事例の増加、チームの連携不足によるコミュニケーションエラーなど、医療事故のリスクが高まっています。
医療の質の低下は、患者離れや評判の悪化につながり、経営にも直接的な影響を与えます。
質の高い医療を維持するには、適正な人員配置と業務改善、職員が余裕を持って働ける環境作りが不可欠です。
過重労働や人手不足によるストレスは、職員の心身を蝕み、離職の直接的な引き金となります。
とくに優秀な人材ほど、よりよい労働環境を求めて他院へ流出する傾向が強いです。
1人の離職が、残された職員の負担をさらに増やすという負のスパイラルに陥ります。
労働環境の悪化に歯止めがかからなければ、組織全体の士気が低下し、チーム医療の機能不全を招くでしょう。
結果として、採用コストも増大し続けます。
人件費や物価の高騰が続く一方で、診療報酬の大幅な伸びは期待できません。
これに加えて、採用コストの増加や職員の離職による生産性の低下が、病院の収益性を着実に圧迫します。
初期段階では、賞与の削減や設備投資の先送りで何とか対応できるかもしれません。
しかし、赤字経営が慢性化すれば、金融機関からの融資も困難になります。
最終的には運転資金が枯渇し、経営破綻に至るリスクも十分に考えられます。
経営者の高齢化に加え、深刻化する経営課題が事業承継をさらに困難にしています。
子供や親族がいたとしても、将来性の見えない病院の経営を引き継ぐことに躊躇するケースは少なくありません。
M&Aによる第三者承継も選択肢の1つですが、経営状態が悪化した病院の買い手を見つけるのは容易ではないでしょう。
最終的に後継者が見つからなければ、地域医療に不可欠な存在であっても、廃業という選択を迫られる医療機関は今後さらに増えていくと予測されます。
複雑に絡み合った課題も、整理すれば解決の糸口が見えてきます。
ここでは、課題解決に向けた3つの改革領域と、具体的な施策を紹介します。
それぞれ見ていきましょう。
採用から育成・評価・待遇に至るまで、総合的な人材マネジメントの仕組みを再構築することが不可欠です。
そのためには、以下4つの施策が柱となります。
詳しく解説します。
人材紹介会社に登録して待つだけの採用活動では、競争に勝てません。
自院の魅力や理念を積極的に発信し、求める人材に直接アプローチする「攻め」の採用戦略への転換が必要です。
たとえば、病院のWebサイトやSNSを活用し、現場で働く職員のインタビューや1日の仕事の流れを紹介します。
これにより、求職者は働くイメージを具体的に持てるでしょう。
また、見学会やインターンシップの機会を設けることも、ミスマッチを防ぐうえで有効な手段となります。
職員の不満や離職の大きな原因の1つに、評価の不公平感があります。
院長の印象や年功序列に偏った評価ではなく、誰もが納得できる客観的で公平な人事評価制度の構築が急務です。
まずは、役職や職種ごとに期待される役割や目標を明確に定義します。
そのうえで、目標の達成度や業務への貢献度を可視化できる評価項目を設定しましょう。
評価結果を給与や賞与に適切に反映させることで、職員のモチベーション向上につながります。
若手や中堅の職員が離職を考える理由として、「この病院にいても成長できない」というキャリアへの不安があげられます。
職員一人ひとりが、将来の目標を持って働き続けられるよう、明確なキャリアパスを示すことが効果的です。
たとえば「3年後にはリーダー、5年後には管理職」といったモデルケースを提示します。
そして、そのステップアップに必要な研修や資格取得を病院として支援する制度を整えます。
成長できる環境があることは、職員の定着率を大きく向上させるでしょう。
給与や賞与といった金銭的な報酬だけでなく、働きやすさや働きがいを高める非金銭的な報酬も重要視されています。
とくに多様な働き方を支援する福利厚生は、人材確保における大きなアピールポイントです。
具体的には、子育て中の職員を支援する院内保育所の設置や、時短勤務制度の柔軟な運用があげられます。
職員食堂のメニューを充実させたり、リフレッシュ休暇制度を導入したりすることも、職員満足度の向上に効果的です。
長年の慣行で行われてきた業務フローを見直し、生産性を最大化する改革が求められます。
そのためには、以下3つの改革を検討しましょう。
これらの改革で、業務効率が向上します。
DX(デジタルトランスフォーメーション)と聞くと難しく感じるかもしれませんが、まずは身近な業務から始めることが成功の秘訣です。
たとえば、電話予約をWeb予約システムに切り替えるだけでも、電話対応業務を大幅に削減できます。
来院前に行うWeb問診システムを導入すれば、患者の待ち時間を短縮できるだけでなく、カルテ入力の手間も省けます。
こうした小さな成功体験を積み重ねることが、院内全体のDXを推進する大きな力となるでしょう。
医師の働き方改革に対応するためにも、チーム医療の推進は不可欠です。
医師でなければできないコア業務に集中できるよう看護師や薬剤師、事務職員など他職種へのタスクシフトを積極的に進める必要があります。
たとえば、書類作成やデータ入力の一部を、事務作業補助者に任せることが考えられます。
そのためには、各職種の業務範囲を明確にし、情報共有を円滑にするための定期的な会議が有用です。
職種間の連携が、組織全体の生産性を向上させます。
ノンコア業務まで、すべてを院内の人材でまかなう必要はありません。
専門性の高い業務は、外部のプロに委託(アウトソーシング)することも有効な選択肢です。
代表例として、経理や労務、システムの保守管理などがあげられます。
これらの業務を外部に委託することで、職員は患者対応などの本来注力すべきコア業務に集中できます。
コスト削減だけでなく、業務の質の向上にもつながるでしょう。
専門家の活用は、効果的な経営戦略の1つです。
職員が同じ目標に向かって自律的に行動できるような、組織文化を形成することが、改革を成功させる土台となります。
そのためには、以下2つが重要です。
こうした取り組みへの投資が、大きな成果をもたらします。
「私たちは、何のためにこの病院に集まっているのか」という共通の価値観、それが経営理念です。
理事長の頭の中にだけある理念では、組織を動かす力にはなりません。
理念を全職員が自分事として捉え、日々の業務における判断基準とすることが肝心です。
そのためには、理事長自らが、あらゆる機会を通じて理念に込めた想いを繰り返し語り続ける必要があります。
理念に基づいた行動をとった職員をきちんと評価し、称賛する文化を育むことで、理念は組織全体に深く浸透していきます。
心理的安全性とは、職員が組織の中で、自分の意見や気持ちを安心して発言できる状態のことです。
この心理的安全性が低い職場では、職員はミスをおそれて新しい挑戦を避けたり、問題を1人で抱え込んだりしてしまいます。
職種や役職に関わらず、誰もが自由に意見交換できるミーティングの場を設けましょう。
また、失敗を責めるのではなく、失敗から学ぶことを推奨する文化を醸成することが大切です。
風通しのよい職場環境が、職員の主体性を引き出し、組織の成長を加速させます。
医療法人の経営改革は、経営者の強いリーダーシップなくして実現できません。
人材不足や経営悪化という危機的状況を打開するには、正しいマネジメント手法の導入が不可欠です。
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