医療という、人の生命を直接預かる崇高な事業。
その経営は、常に目に見えない無数の「リスク」と隣り合わせです。
医療過誤や院内感染といった直接的な医療安全リスクはもちろんのこと、深刻化する人材不足、頻発する労務トラブル、そして厳しさを増す経営環境など、現代の病院経営者が向き合うべきリスクは、かつてなく多様化・複雑化しています。
多くの病院では、インシデントレポートの収集や定期的な研修、マニュアルの改訂といった対策が講じられています。
しかし、それでもなお、なぜ同じような問題が繰り返し発生するのでしょうか。
なぜ、組織の疲弊は止まらないのでしょうか。
その答えは、多くの経営者が見過ごしがちな場所にあります。
実は、院内で発生するほぼすべてのリスクの根源は、個々の職員のスキルや意識の問題ではなく、組織全体の「構造」と「仕組み」、すなわち「組織マネジメント」の不備に起因しているのです。
「ヒューマンエラーは起こるもの」という前提に立ち、それを個人の責任に帰するのではなく、エラーが起こりにくい、あるいはエラーが起きても重大な結果に至らない「組織」をいかにして構築するか。
これこそが、現代の病院経営者に求められるリスクマネジメントの新常識です。
本記事では、病院経営を取り巻くリスクの全体像を改めて整理するとともに、なぜ従来の対策では限界があるのかを解き明かします。
医療安全に関わるリスクは、患者の生命や健康に直接的な影響を及ぼす、病院にとって最も根源的かつ重大なリスク領域です。
ひとたび発生すれば、患者やその家族に多大な苦痛を与えるだけでなく、病院の信頼を失墜させ、経営に致命的なダメージを与えかねません。
インシデントレポート(ヒヤリ・ハット報告)は、潜在的なリスクを可視化するための重要なツールです。
しかし、その運用が「レポートを提出すること」自体を目的としてしまい、集まった情報が具体的な再発防止策、すなわち「組織のルール変更」に繋がっていなければ、何の意味もありません。
また、「報告すると自分が責められるのではないか」という雰囲気が組織内にあると、職員は正直な報告を躊躇し、重要な情報が隠蔽されてしまう危険性すらあります。
「なるべく早く」「適切に」「臨機応変に」「しっかりと」。
これらは、日常の業務指示で何気なく使われがちな言葉ですが、すべて受け手によって解釈が異なる、極めて曖昧な表現です。
「なるべく早く」とは、10分後なのか、1時間後なのか。
「適切に」とは、具体的に何をどうすることなのか。
このような曖昧な指示が、職員の判断の迷いや、期待とのズレを生み、ミスやトラブルの原因となります。
リスクに強い組織では、こうした曖昧な言葉は徹底的に排除されます。
すべての業務指示やルールは、「誰が」「何を」「いつまでに」「どのような状態で」行うべきか、誰もが一意に解釈できる具体的な言葉で定義されています。
この「曖昧さの排除」こそが、組織マネジメントの第一歩であり、リスクマネジメントの核心なのです。
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「識学 × P-UP neo」
この記事の監修者
有馬大悟 Arima Daigo
株式会社P-UP neo 事業開発室 室長 識学上席コンサルタント
《資格》
識学認定コンサルタント
《プロフィール》
慶応大学卒業後、塾講師、TV局AD、家庭教師を経て2012年にP-UPに入社。
社会インフラである医療、介護福祉、学校法人から海外医療法人の制度設計~管理職育成~新人採用の仕組みを構築し、組織成長に貢献。
他言語、異文化制度設計、管理手法の確立を実践し組織成長を実現可能です。
非営利法人における初年度更新率=満足度は100%