後継者不在や経営の効率化など法人の将来を見据え、組織再編を検討している経営者の方も多いのではないでしょうか?
組織の形が大きく変わる再編では、職員の処遇や人事制度の統合といった「人」の課題が必ず生じます。
本記事では、医療法人の組織再編における代表的な手法やその特徴を解説します。
盤石な経営体制の構築には、組織の土台となる再編の知識が不可欠です。
ぜひ貴院の未来を創るためにご活用ください。
医療法人の組織再編とは、合併や分割、事業譲渡といった手法を用いて、法人の経営体制や事業内容を再構築することです。
組織再編は、法人の持続的な成長や経営課題の解決に不可欠な経営戦略といえます。
ここでは、以下2つのポイントからその概要を解説します。
これらの背景と法改正の動きを理解することで、組織再編の重要性が見えてきます。
医療法改正により、医療法人の組織再編の選択肢が広がりました。
とくに、平成28年(2016年)9月1日施行の医療法改正で、新たな「分割」制度が導入されたのがもっとも大きな変更点です。
この制度により、法人が持つ事業に関する権利義務の一部をほかの法人へ承継させることが可能となりました。
特定の診療科や介護部門の切り出しなど、より柔軟な経営戦略が実行できるようになりました。
その運用については、平成28年3月25日に厚生労働省から通知が出ています。
医療法人の組織再編が増加している背景には、深刻な経営課題があります。
最大の要因は後継者不在の問題で、開業医の高齢化により事業承継が困難なケースが急増しています。
また、診療報酬の抑制や人件費の高騰により、単独での経営維持が難しくなっている法人も少なくありません。
複数の診療所を運営する法人では、管理部門の重複によるコスト増も課題です。
地域によっては人口構造の変化に伴い、医療機関間の機能分化や連携が求められる状況もあります。
こうした課題を解決するため、合併による規模の拡大や分割による事業の選択と集中など、組織再編を選択する医療法人が増えています。
医療法人の組織再編には、目的や状況に応じてさまざまな手法が存在します。
法人の経営権を移すものから事業の一部を切り出すものまで、その特徴は多様です。
ここでは、代表的な6つの手法とその特徴を紹介します。
自院の課題解決に最適な手法を選ぶには、それぞれの特徴を理解することが大切です。
合併は、2つ以上の医療法人を1つに統合する手法で、
吸収合併と新設合併の2種類があります。
合併により経営資源の集約が可能となり、管理部門の統合によるコスト削減が期待できます。
また、規模の拡大により医薬品の仕入れ交渉力の向上、人材配置の流動化及びグループ内での医師確保につながるでしょう。
ただし、異なる組織文化の統合には時間がかかるため、職員への丁寧な説明と段階的な統合プロセスが欠かせません。
地域の中核病院を目指す場合には、とくに有効な手法といえます。
分割は、医療法人の事業の一部をほかの法人に承継させる手法です。
平成28年9月の医療法改正で導入され、医療法人の組織再編がより容易になりました。
不採算部門の切り離しや、地域特性に応じた専門特化など、戦略的な組織再編が実現できます。
分割には吸収分割と新設分割があります。
ただし、分割には都道府県知事の認可が必要で、債権者保護手続きなど、法的な手続きを慎重に進めなければなりません。
事業譲渡は、医療法人の事業の全部または一部をほかの法人に譲渡する手法です。
合併と異なり、個別の資産や負債を選択して譲渡できる点が大きな特徴となります。
不要な資産や簿外債務を引き継がずに済むため、リスクを限定した組織再編が可能です。
ただし、医療法上の許認可は承継されないため、譲受側は新たに開設許可を取得する必要があります 。
出資持分譲渡は、持分ありの医療法人において、社員の出資持分を第三者に譲渡する手法です。
出資持分譲渡のみでは医療法人の財産権を取得するだけで、経営権を取得することにはならず、社員の交代が必須です。
株式会社の株式譲渡に相当する方法で、もっともシンプルな組織再編といえます。
法人格はそのまま維持されるため、許認可の再取得は不要で、職員の雇用関係も継続されます。
ただし、持分なしの医療法人では利用できない手法であることは注意しましょう。
開業医の引退時の事業承継や、後継者への経営権移転で広く活用されています。
手続きが比較的簡便なため、短期間での実行が可能です。
持分なし法人への移行は、持分あり医療法人が定款変更と持分放棄により行います。
厚生労働大臣が認定する「
」が講じられており、出資者の相続税・贈与税の納税猶予・免除措置が受けられます 。
さらに平成29年度税制改正で、医療法人自体への贈与税非課税措置が追加。
この特例措置の認定期限は令和8年12月31日までです 。
社会医療法人や特定医療法人への移行は、より多くの要件を満たす必要がありハードルが高いとされています 。
一方で、一般的な持分なし法人への移行は、相続税対策や事業承継の円滑化につながります。
ただし、出資者は持分や残余財産分配請求権を放棄するため、慎重な検討が必要です。
本制度は、事業承継を考える経営者や公益性の高い医療を目指す法人に適した選択肢です。
参考資料:厚生労働省「持分なし医療法人への移行に関する手引書」
グループ法人化は、複数の医療法人を親子関係や兄弟関係で結びつけ、グループとして一体的に経営する手法です。
各法人の独立性を保ちながら、医薬品の共同購入や人材の相互派遣、医療機器の共同利用などでスケールメリットを享受できます。
また、グループ内での機能分化により、急性期から回復期、在宅医療まで切れ目のない医療提供体制の構築も実現可能です。
経営戦略の共有や管理部門の集約により、効率的な運営が期待できるでしょう。
地域包括ケアシステムの構築を目指す医療法人にとって、有効な選択肢となっています。
医療法人の組織再編は法的手続きだけでなく、職員のマネジメントや組織文化の統合など、多岐にわたる課題への対応が求められます。
P-UP neoは、組織マネジメントコンサルティングを通じて、管理職が機能しない、従業員の離職が絶えないといった組織課題の解決をサポートしています。組織再編を成功させるためには、適切なマネジメント体制の構築が不可欠です。
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