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病院経営の成否を分ける「人事制度」とは?職員が辞めずに成長する仕組みの作り方
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2025/11/11
「
職員の離職が止まらない。特に、将来を期待していた中堅職員が辞めていく」
「院長のビジョンが現場に浸透せず、部門間の連携もバラバラだ」
「何を基準に評価し、給与を決めれば、職員は納得してくれるのだろうか」
このような「人」と「組織」に関する悩みは、規模の大小を問わず、あらゆる病院経営者が直面する、最も根深く、そして最も解決が困難な課題ではないでしょうか。
多くの経営者は、その原因を職員個人の意識や、コミュニケーション不足といった、目に見えない曖昧なものに求めがちです。
しかし、実はこれらの問題の根源は、もっと構造的な場所、すなわち、組織の根幹をなす「人事制度」そのものの機能不全にあるケースがほとんどです。
人事制度とは、単に給与を計算し、昇進を決めるための事務的なルールではありません。
それは、「病院が職員に何を期待し、どのような行動を評価し、どう報いるのか」という、経営者から職員への最も強力なメッセージであり、組織の文化と職員の行動を方向づける、経営そのものの根幹をなすインフラです。
本記事では、なぜ今、病院経営の成否が人事制度によって左右されるのか、その理由を解き明かします。
貴院の人事制度、いつから見直していませんか?
まず、院長・経営者の皆様に問いかけたいと思います。
皆様の病院で現在運用されている人事制度(等級制度、評価制度、報酬制度)は、いつ、どのような思想に基づいて作られたものでしょうか。
もしかすると、それは10年以上も前に、前院長の時代に作られたものを、大きな見直しもないまま引き継いでいるだけかもしれません。
あるいは、他の病院の事例を参考に、とりあえず形だけ整えたものかもしれません。
しかし、病院を取り巻く環境は、この10年で劇的に変化しました。
終身雇用や年功序列が当たり前だった時代は終わり、働く人々の価値観は多様化。
人材の流動性は高まり、医療業界の採用競争は激化の一途をたどっています。
国の医療政策も、病院に対してより高い専門性と生産性を求める方向に大きく舵を切りました。
このような激変の時代において、時代遅れの古い地図(人事制度)を頼りに航海を続けていては、組織という船が座礁してしまうのは、もはや時間の問題です。
職員のエンゲージメントを高め、厳しい競争を勝ち抜き、
持続可能な経営を実現するためには、現代の環境に適合した、戦略的な人事制度へとアップデートする
ことが、今まさに求められているのです。
なぜ今多くの病院で「人事制度改革」が急務とされているのか
「うちは昔からこのやり方でやってきたし、今すぐ変える必要はない」。
そう考える経営者の方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、人事制度改革は、もはや先延ばしにできるテーマではありません。
その背景には、病院経営の根幹を揺るがす、避けては通れない外部環境と内部環境の変化があります。
外部環境の変化①:加速する人材獲得競争と、深刻化する人手不足
少子高齢化に伴う労働力人口の減少は、医療・福祉業界を直撃しています。
厚生労働省が発表する一般職業紹介状況によれば、医師や看護師、介護サービス職といった専門職の有効求人倍率は、常に全産業平均を大きく上回る高い水準で推移しています。
これは、一人の求職者を、複数の医療機関が奪い合っているという、完全な「売り手市場」を意味します。
このような状況下で、求職者は何を基準に職場を選ぶのでしょうか。
給与や福利厚生はもちろん重要ですが、それ以上に、「自分の働きが正当に評価されるか」「この病院で働き続けることで、専門職として成長できるか」といった、キャリア形成に関わる視点を重視する傾向が強まっています。
公平で透明性の高い評価制度や、キャリアパスが明確に示された等級制度を持たない病院は、採用競争において致命的なハンディキャップを負うことになります。
もはや、
魅力的な人事制度は、人材を「定着」させるためだけでなく、そもそも「獲得」するための、必要不可欠な経営インフラ
なのです。
外部環境の変化②:診療報酬改定と、生産性向上の要請
2年に一度行われる診療報酬改定は、病院経営の方向性を大きく左右します。
近年の改定の大きな潮流は、医療機能の分化・連携の推進と、医療従事者の働き方改革、そして医療の質の向上を両立させる、というものです。
これは、病院に対して、これまで以上に「生産性の高い組織運営」を強く要請していることに他なりません。
限られた人員と財源の中で、質の高い医療を提供し続けるためには、職員一人ひとりが自身の役割を明確に認識し、最大限のパフォーマンスを発揮できる環境を整える必要があります。
漫然と日々の業務をこなすのではなく、組織全体の目標達成に貢献する行動を、職員に促す。
そのための最も強力なツールこそが、人事制度です。
例えば、チーム医療への貢献度や、業務改善への取り組みといった項目を評価制度に組み込むことで、国の政策が求める方向へと、組織全体を戦略的に導くことが可能になります。
内部環境の課題:価値観の多様化と、旧来の年功序列制度の崩壊
かつての日本社会では、一つの組織に長く勤め、年齢と共に給与や役職が上がっていく「年功序列」が一般的でした。
しかし、現代の、特に若い世代の職業観は大きく変化しています。
彼らは、年齢や勤続年数といった属人的な要素ではなく、自らの「成果」や「貢献度」によって、公平に評価されることを望んでいます。
勤続年数が長いというだけで、成果を出していない職員が高い給与を得ている一方で、若くして高いパフォーマンスを発揮している職員の処遇が低いまま
である。
このような旧来の年功序列制度は、優秀な若手・中堅職員のモチベーションを著しく削ぎ、離職の直接的な引き金となります。
職員の価値観が多様化した現代において、組織が持続的に成長するためには、年齢や経験に関わらず、成果を出した者が正当に報われる、納得性の高い人事制度への転換が不可欠なのです。
その人事制度が職員の不満と離職を生む。多くの病院が陥る失敗パターン
人事制度改革の重要性を理解していても、その設計を間違えれば、むしろ組織に混乱をもたらし、職員の不満を増大させる結果になりかねません。
ここでは、多くの病院が陥りがちな、人事制度設計における4つの典型的な失敗パターンを解説します。
失敗①:評価基準が「曖昧」で、評価者の主観に依存している
人事制度が機能しない最大の原因は、評価基準の「曖昧さ」にあります。
多くの病院の評価シートには、「協調性」「積極性」「責任感」「リーダーシップ」といった、一見もっともらしい項目が並んでいます。
しかし、これらの言葉の定義は、評価者(上司)によって全く異なります。
ある上司は「会議で積極的に発言すること」を積極性と評価し、別の上司は「指示された業務以外にも、自ら仕事を見つけて取り組むこと」を積極性と評価するかもしれません。
これでは、職員は「誰が上司になるか」という運によって評価が左右されることになり、強い不公平感を抱きます。
評価基準が曖昧である限り、評価は評価者の主観や、個人的な好き嫌いに依存せざるを得ず、制度そのものへの信頼が失われてしまいます。
失敗②:「頑張り」や「プロセス」を評価してしまい、不公平感を生んでいる
「彼は、毎日遅くまで残って、本当によく頑張っている」「彼女は、難しい患者さんにも、粘り強く対応していた」。
こうした「頑張り」や「プロセス」を評価の対象とすることも、一見、職員の努力に報いる良い方法のように思えます。
しかし、これもまた、深刻な不公平感を生む原因となります。
なぜなら、「頑張り」は客観的に測定することが極めて困難だからです。
残業時間が長い職員が、本当に他の職員より多くの成果を出しているとは限りません。
むしろ、効率的に業務をこなし、定時で帰る職員の方が、生産性が高い可能性もあります。
「頑張り」という主観的な要素を評価基準に持ち込むことは、結果的に「頑張っているように見える」職員や、上司へのアピールが上手い職員を優遇することにつながり、黙々と成果を出す職員のモチベーションを著しく低下させる
のです。
失敗③:評価と報酬が連動しておらず、モチベーションにつながらない
人事評価が行われていても、その結果が、職員にとって最も重要な関心事である「報酬(給与や賞与)」に、どのように反映されるのか、そのロジックが不透明であるケースも多く見られます。
最高評価の「S」と、標準評価の「B」で、賞与の額がいくら変わるのか。
どのような評価を得れば、次の等級に昇格し、基本給がいくら上がるのか。
この「評価と報酬の連動性」がブラックボックス化していると、職員は評価制度を「自分たちの処遇を決める重要な仕組み」ではなく、「ただ提出するだけの形式的な儀式」としか認識しなくなります。
評価の結果が自身の報酬に明確に跳ね返ってくる、という実感があって初めて、職員は評価制度を自分事として捉え、評価を高める
ための行動、すなわち、組織の目標達成に貢献する行動を、主体的に取るようになるのです。
失敗④:多職種を同じ基準で評価しようとして、現場の反発を招いている
病院は、看護師、理学療法士、診療放射線技師、薬剤師、医療事務など、極めて多様な専門職種が集まる組織です。
それぞれの職種で、求められる専門性や、果たすべき役割、そして成果の尺度は全く異なります。
にもかかわらず、全職種共通の、画一的な評価シートや評価基準を適用しようとすれば、必ず現場から「私たちの仕事の実態を、何もわかっていない」という強い反発を招きます。
例えば、看護師に求められる「ケアの質」と、医療事務に求められる「レセプト請求の正確性」を、同じ物差しで測ることは不可能です。
人事制度を成功させるためには、それぞれの職種の専門性を深く理解し、その職種ごとに最適化された、納得性の高い評価基準を設計することが不可欠なのです。
【本質】強い病院組織を作る人事制度の3大構成要素
では、これらの失敗を乗り越え、職員が辞めずに成長し、組織全体のパフォーマンスを最大化する人事制度とは、どのようなものなのでしょうか。
それは、①等級制度、②評価制度、③報酬制度、という3つの要素が、明確な思想のもとに、有機的に連動している制度です。
要素①:等級制度|「序列」ではなく「役割」を明確にする
等級制度は、人事制度全体の骨格をなす、最も重要な土台です。
それは、単に職員をランク付けするための序列ではなく、それぞれの等級に、どのような「役割」と「責任」が期待されているのかを明確に定義する、組織の設計図そのものです。
職員のキャリアパスを明示し、成長意欲を引き出す
将来のキャリアパスを具体的に示します。「一般職員」から「主任」、「係長」、「課長」へとステップアップしていく中で、それぞれの等級で求められるスキルや成果が何であり、どのような役割を担うことになるのかが明確に定義されています。
これにより、職員は自身の現在地と、目指すべき将来像を具体的にイメージすることができ、「次の等級に上がるためには、何を身につければよいのか」という、自律的な成長意欲を引き出すことができます。
専門職と管理職、それぞれのキャリアコースを設定する
特に病院のような専門職集団においては、キャリアパスを一つに限定しない「複線型」の等級制度を導入することが有効です。
臨床のスペシャリストとして、現場の第一線で専門性を極めていきたい職員のための「専門職コース」と、部下をマネジメントし、組織運営を担う「管理職コース」。
この二つの道を準備することで、職員は自らの適性や志向に合ったキャリアを選択できるようになります。
これにより、例えば、
「管理職にはなりたくないが、給与を上げるためには昇進するしかない」といった、不本意なキャリア選択によるミスマッチを防ぐ
ことができます。
要素②:評価制度|「曖昧さ」を排除し、貢献度を正しく測る
等級制度という骨格の上に、組織の血流となる評価制度を構築します。
評価制度の目的は、職員の序列付けではなく、組織が求める正しい行動を促し、個人の成長を支援することにあります。
評価項目は「結果」にフォーカスし、客観的な事実で判断する
失敗パターンで見たように、曖昧な評価は不公平感の温床です。
強い組織の評価制度は、「頑張り」や「プロセス」といった主観的な要素を可能な限り排除し、その職員が、等級ごとに定められた「役割」をどれだけ果たせたか、その「結果」を客観的な事実に基づいて評価します。
そのために、評価項目は「〇〇を達成したか」「△△を期限内に完了できたか」といった、YESかNOか、あるいは数値で明確に判断できるものに設定します。
例えば、「新規プロジェクトの計画達成率95%以上」「担当病棟におけるインシデント発生件数、前年比10%削減」といった具体的な目標を設定し、その達成度を評価するのです。
評価エラーを防ぐための、評価者トレーニングの重要性
どんなに精緻な評価制度を作っても、それを運用する評価者(管理職)が、制度を正しく理解し、公平に運用できなければ意味がありません。
上司の個人的な感情や、部下との人間関係によって評価が歪められる「評価エラー」を防ぐためには、評価者に対する徹底したトレーニングが不可欠です。
評価面談の進め方、事実に基づいた評価の仕方、部下の成長を促すフィードバックの方法などを体系的に学び、評価者としてのスキルを標準化することが、制度の信頼性を担保する上で極めて重要です。
要素③:報酬制度|「評価」と完全に連動させ、納得感を醸成する
人事制度の最終的な出口であり、職員の納得感を決定づけるのが報酬制度です。
強い組織の報酬制度は、等級と評価の結果に、明確なロジックで完全に連動しています。
貢献した職員が報われる、メリハリのある給与体系
「どの等級に所属しているか」によって基本給のレンジが決まり、「その等級の中で、どのような評価を得たか」によって、具体的な昇給額や賞与の額が決まる。
この原則を徹底します。
これにより、組織への貢献度が高い職員は、より高い報酬を得ることができ、貢献度が低い職員との間に、納得感のある処遇の差(メリハリ)が生まれます。
賞与や昇給のロジックを全職員に開示する
さらに重要なのが、その報酬決定のロジック、すなわち「評価ランクが一つ上がると、賞与がいくら増えるのか」「S評価を2期連続で取れば、次の等級に昇格する資格が得られる」といったルールを、全職員に対してガラス張りにすることです。
報酬決定のプロセスが透明化されることで、
職員は制度に対する信頼を深め、「このルールの上でなら、正々堂々と競争しよう」という、健全な向上心が醸成される
のです。
【5ステップで解説】失敗しない病院人事制度の構築・導入プロセス
では、実際に自院の人事制度を改革しようとする場合、どのような手順で進めていけばよいのでしょうか。
ここでは、失敗しないための標準的なプロセスを、5つのステップに分けて解説します。
ステップ①:現状分析と課題の特定
何よりもまず、現状を正しく把握することから始めます。
既存の人事制度に関する規程類をすべて洗い出し、その内容を確認します。
同時に、職員に対するアンケート調査や、経営層から現場の一般職員まで、各階層へのヒアリングを実施します。
これにより、
「制度と運用の乖離」「職員が感じている不満や問題点」「組織風土の課題」などを、多角的に可視化
します。
この客観的な現状分析が、改革の方向性を決定づける、最も重要なインプットとなります。
ステップ②:経営理念・ビジョンに基づいた制度の基本方針策定
次に、現状分析で見えてきた課題を踏まえ、新しい人事制度が目指すべき「基本方針」を定めます。
この時、最も重要な拠り所となるのが、病院の「経営理念」や「ビジョン」です。
「我々の病院は、地域社会に対してどのような価値を提供し、将来的にはどのような組織を目指すのか」。
この原点に立ち返り、「そのビジョンを実現するためには、職員にどのような人材になってほしいのか、どのような行動を求めていくのか」を定義します。
この「求める人材像」こそが、新しい人事制度の設計思想、すなわち魂となるのです。
ステップ③:等級・評価・報酬制度の具体的な設計
基本方針が固まったら、いよいよ制度の具体的な設計に入ります。
ステップ②で定めた「求める人材像」を実現するために、3大構成要素である「等級」「評価」「報酬」の各制度を、有機的に連動するように設計していきます。
職種ごとの役割定義に基づいた等級制度の構築、結果にフォーカスした評価項目の設定、評価と完全に連動した報酬テーブルの作成など、専門的で緻密な作業が求められます。
ステップ④:職員への十分な説明とシミュレーション
新しい制度が完成したら、導入前に、全職員に対して十分な説明を行うことが極めて重要です。
なぜ制度を変える必要があるのか、新しい制度はどのような考え方で作られており、自分たちの働き方や処遇にどう影響するのか。
説明会などを通じて、丁寧にコミュニケーションを取り、職員の疑問や不安を解消します。
また、
新しい報酬制度を導入した場合、個々の職員の給与がどのように変動するのかを、事前に詳細にシミュレーションする
ことも不可欠です。
これにより、意図せぬ大幅な不利益変更などを未然に防ぎ、スムーズな制度移行を実現します。
ステップ⑤:導入後の定期的なモニタリングとチューニング
人事制度は、一度導入して終わりではありません。
実際に運用してみると、必ず予期せぬ問題点や、改善すべき点が見えてきます。
導入後も、定期的に職員へのアンケートやヒアリングを実施し、制度が意図した通りに機能しているかをモニタリングします。
そして、経営環境の変化や、組織の成長段階に合わせて、制度を柔軟に見直し、チューニングしていく。
この継続的な改善サイクルを回し続けることが、制度を形骸化させず、生きた仕組みとして定着させるための鍵となります。
なぜ、自院だけでの人事制度改革は失敗しやすいのか?
これらのプロセスは、理論上は明快ですが、いざ自院の力だけで実行しようとすると、多くの場合、途中で頓挫してしまいます。
なぜなら、そこには内部からの改革を阻む、強力な3つの障壁が存在するからです。
客観的な視点の欠如と、ノウハウ不足
「灯台下暗し」という言葉があるように、内部の人間は、自院の組織が抱える問題点や、不合理な慣習に気づきにくいものです。
長年の経験が、かえって客観的な視点を曇らせてしまいます。
また、人事制度の設計には、労働法規に関する専門知識や、他院の事例に関する知見、そして評価制度や報酬制度を構築するための高度なノウハウが求められます。
これらの専門性を、院内の人材だけでまかなうことは、極めて困難です。
院内の人間関係や既得権益が改革を阻む
人事制度改革は、時に、既存の秩序やパワーバランスに変化をもたらします。
それは、これまで高い処遇を得ていたベテラン職員や、特定の部署の有力者にとっては、自らの既得権益を脅かすものと映るかもしれません。
こうした院内の人間関係やしがらみが、「あの先生に反対されたら、何も進まない」「看護部から強い抵抗にあって、頓挫してしまった」といった、改革の強力なブレーキとなるのです。
日々の診療業務に追われ、改革を断行するエネルギーがない
特に中小規模の病院では、院長や事務長といった経営幹部が、プレイングマネージャーとして日々の業務に追われているケースがほとんどです。
人事制度改革という、腰を据えて取り組むべき一大プロジェクトに、十分な時間と精神的なエネルギーを割くことは、物理的に不可能です。
結果として、改革の必要性を感じてはいても、「いつかやろう」と先延ばしにされ続け、組織は変われないまま時間だけが過ぎていくのです。
人事コンサルティングを活用し、改革を成功に導くという選択肢
これらの障壁を乗り越え、本質的な人事制度改革を最短距離で、かつ確実に実行するための一つの有効な手段が、人事・組織マネジメントを専門とする外部コンサルティングの活用です。
外部の専門家がもたらす3つの価値
優れたコンサルタントは、単に制度設計のノウハウを提供するだけではありません。
改革を成功に導くための、3つの重要な価値を提供します。
価値①:客観的な組織診断と、他院の成功・失敗事例の提供
外部の専門家は、しがらみのない第三者の視点から、組織を冷静に診断し、経営者自身も気づいていない本質的な課題を可視化します。
また、数多くの病院の支援実績から得られた、成功事例・失敗事例に関する豊富な知見を提供し、自院が同じ轍を踏まないための、最適な道筋を示してくれます。
価値②:しがらみに捉われない、改革の推進力
コンサルタントは、院内の人間関係から完全に独立した立場で、組織にとって本当に正しいことは何かを、経営者に進言します。
時に耳の痛い指摘も厭わない彼らの存在は、経営者がしがらみを乗り越え、改革を断行するための強力な後ろ盾となります。
「外部の専門家もこう言っている」という事実は、院内の抵抗勢力を説得する上でも有効な材料
となります。
価値③:制度設計から導入・運用までの一貫したサポート
人事制度改革は、設計して終わりではありません。
その後の職員への説明、導入、そして定着までの運用サポートこそが、改革の成否を分けます。
信頼できるコンサルタントは、この一連のプロセスに責任を持って伴走し、改革が「絵に描いた餅」で終わらないよう、最後まで力強く支援してくれます。
失敗しないコンサルティング会社の選び方
ただし、コンサルティング会社ならどこでも良いというわけではありません。
特に、病院という特殊な組織の改革を任せるパートナーは、慎重に見極める必要があります。
医療業界の組織文化や、多職種が混在する現場の特殊性を深く理解しているか。
そして何より、個人の経験則や精神論に頼るのではなく、どんな組織にも応用可能な、普遍的で再現性のある「マネジメント理論」に基づいた、一貫性のあるソリューションを提供できるか。この基準で、信頼できるパートナーを選ぶことが重要です。
人事制度は、病院の未来を創るための最も重要な経営インフラである
優れた人事制度は、職員の不満を解消し、離職を防ぐ「守り」の機能と、職員の成長を促し、組織のパフォーマンスを最大化する「攻め」の機能の両方を併せ持ちます。
それは、院長のビジョンを組織の隅々にまで浸透させ、職員一人ひとりの日々の行動と結びつける、最も強力な経営のインフラです。
時代遅れのインフラを放置し続ければ、組織は必ず衰退します。
逆に、現代の環境に適合した、強固でしなやかなインフラを再構築することができれば、組織は必ず再生し、持続的な成長軌道に乗ることができます。
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